- SaaS業界の専門用語、もう怖くない
- SaaSビジネスの主要用語10選
- 1. MRR(Monthly Recurring Revenue)|月次経常収益
- 2. ARR(Annual Recurring Revenue)|年間経常収益
- 3. LTV(Life Time Value)|顧客生涯価値
- 4. CAC(Customer Acquisition Cost)|顧客獲得コスト
- 5. ユニットエコノミクス(Unit Economics)
- 6. チャーンレート(Churn Rate)|解約率
- 7. オンボーディング(Onboarding)
- 8. アップセル/クロスセル
- 9. PMF(Product Market Fit)
- 10. NPS(Net Promoter Score)|顧客推奨度
- 用語を組み合わせて理解する:実践的活用
- まとめと次のステップ
SaaS業界の専門用語、もう怖くない
SaaS(Software as a Service)はクラウド上でソフトウェアを提供するビジネスモデルで、今や世界中で急成長を遂げています。スタートアップから大企業まで幅広く導入され、営業やマーケティング、カスタマーサクセスの現場では毎日のようにSaaS特有の用語が飛び交っています。しかし、初めて業界に入る人や営業に異動したばかりの人にとっては、「MRR」「LTV」「PMF」などの専門用語が壁となり、会議や商談で自信をなくしてしまうことも多いのではないでしょうか。
この記事では、SaaS業界で絶対に知っておくべき10の主要用語をピックアップし、定義、計算方法、具体例、ビジネス上の重要性、さらに現場での活用方法や注意点まで徹底的に解説します。読み終えた時には、面接や商談で用語を正しく使いこなし、数値を踏まえた会話ができるようになります。
SaaSビジネスの主要用語10選
1. MRR(Monthly Recurring Revenue)|月次経常収益
定義: MRRは「毎月繰り返し発生する売上」を指します。SaaSでは一度契約すると毎月課金されるモデルが基本のため、月次の安定収益を把握することが最も重要です。
計算式:
MRR = 月額課金ユーザー数 × 月額単価
具体例:
月額5,000円のプランに200社が契約していれば、MRRは1,000,000円となります。
重要性: MRRは企業の“体温”のようなもので、毎月の健康状態をリアルタイムで示します。さらに「New MRR(新規契約)」「Expansion MRR(アップセル)」「Churned MRR(解約)」などの内訳を分解すると、どこで成長し、どこで失っているのかが見えます。
現場での活用: 経営陣や投資家は毎月のMRR成長率を最重要KPIとしてチェックします。営業チームは月次目標達成度をMRRベースで追い、マーケチームはキャンペーンの効果を「どれだけMRRが増えたか」で評価します。
2. ARR(Annual Recurring Revenue)|年間経常収益
定義: ARRは年間ベースの継続収益を示す指標で、企業の規模感を把握する際に使われます。
計算式:
ARR = MRR × 12
具体例:
MRRが100万円ならARRは1,200万円となります。
重要性: ARRは投資家やVCが企業価値を評価する際の基準になる数字です。スタートアップでは「ARR 1億円突破」がシリーズA資金調達の条件とされることもあります。
現場での活用: 経営計画や来期予算を立てる際、ARRを基準に売上目標を設定します。年額契約が多いエンタープライズ向けビジネスでは、ARRの方が現実的な指標となるため重視されます。
3. LTV(Life Time Value)|顧客生涯価値
定義: 顧客が契約を続ける期間に生み出す利益の総額。顧客1人あたりの“価値”を数値化することで、獲得コストをどこまでかけられるか判断できます。
計算式:
LTV = ARPU(平均売上) × 平均継続月数 × 利益率
具体例:
月額5,000円 × 24か月 × 利益率70% → LTV = 84,000円
重要性: LTVが高いほど、広告や営業活動に投資できる金額も増えます。LTVが低いと広告投資が回収できず赤字になるため、継続率向上や単価アップが必要です。
現場での活用: マーケ部門はLTVを基に広告の入札単価を調整し、営業部門はLTVが高いセグメントにリソースを集中します。
4. CAC(Customer Acquisition Cost)|顧客獲得コスト
定義: 新規顧客を獲得するためにかかったコストの平均値。
計算式:
CAC = (マーケティング費用+営業人件費) ÷ 新規獲得顧客数
具体例:
マーケ費100万円+営業費50万円で30件獲得 → CAC = 約5万円
重要性: CACが高すぎると事業は赤字になります。LTVと比較し、LTV ÷ CAC ≥ 3であることが健全ラインとされます。
現場での活用: 広告運用担当はCACを下げる施策を検討し、営業部門は商談化率や受注率を改善することでCACの最適化を狙います。
5. ユニットエコノミクス(Unit Economics)
定義: 顧客1件あたりの収益性を示す指標で、ビジネスモデルの採算性を判断する基準。
代表指標:
LTV ÷ CAC > 3 であれば健全。1以下であれば赤字で顧客を獲得している状態。
重要性: ユニットエコノミクスがプラスであれば、顧客を増やすほど利益が増えるスケーラブルなモデル。マイナスなら顧客獲得を抑制するか、プロダクト改善が必要です。
現場での活用: 投資家へのピッチ資料で必ず提示する指標。経営者はここを改善するために価格設定やマーケ戦略を見直します。
6. チャーンレート(Churn Rate)|解約率
定義: 一定期間で離脱した顧客の割合。
計算式:
チャーン率 = 解約数 ÷ 期首顧客数
具体例:
期首100社、月末5社解約 → チャーン率 = 5%
重要性: 解約率が高いと、いくら新規顧客を獲得しても売上は伸びません。SaaSの成長において、解約率の低下は新規獲得以上に効果的です。
現場での活用: カスタマーサクセス部門のKPIに設定され、オンボーディングやプロダクト改善の指針となります。
7. オンボーディング(Onboarding)
定義: 契約直後から顧客がサービスを使いこなせるまでの導入・教育プロセス。
ポイント: 初期設定サポート、オンライン説明会、30〜90日フォローなどが含まれます。
重要性: オンボーディングが成功すると顧客が早期に価値を実感し、チャーン率が低下。逆に失敗すると早期解約が増えます。
現場での活用: CS部門はオンボーディング完了率をKPIとして追い、営業は導入事例を活用してスムーズなスタートを支援します。
8. アップセル/クロスセル
アップセル: 上位プランや追加機能を提案して契約単価を上げること
クロスセル: 関連する別サービスを提案して利用範囲を広げること
具体例: ベーシックプラン契約中の顧客にプロプランを案内(アップセル)、関連サービスを追加提案(クロスセル)
重要性: 新規獲得よりも効率よく売上を伸ばせる施策。タイミングを間違えると逆に不満を招くため、顧客が価値を実感したタイミングで行うことが大切です。
9. PMF(Product Market Fit)
定義: プロダクトが市場に受け入れられ、自然に顧客が増えている状態。
サイン: 営業しなくても問い合わせが入る、解約率が低い、口コミが広がる、NPSが高い。
重要性: スタートアップの成長において最初の大きなマイルストーン。PMF達成後は広告費に頼らず成長できるフェーズに移行します。
10. NPS(Net Promoter Score)|顧客推奨度
測定方法: 「友人に勧めますか?」と質問し0〜10点で回答
- 9〜10点:推奨者
- 7〜8点:中立
- 0〜6点:批判者
計算式:
NPS = 推奨者% − 批判者%
重要性: NPSは顧客体験の満足度を数値化した指標。スコアが高いと紹介が増え、CACを下げる効果があります。
用語を組み合わせて理解する:実践的活用
- LTVとCAC: LTV ÷ CAC > 3 で投資拡大OK、<1なら改善急務
- MRRとチャーン率: チャーン率1%改善が年間ARRに大きく影響
- PMFとNPS: NPSが高いほどPMFが近いサイン、マーケ投資効率も改善
まとめと次のステップ
これら10の用語を理解するだけで、商談や会議での発言に説得力が増し、キャリアアップやビジネス成長に直結します。さらに知識を深めたい方は求人情報やオンライン講座をチェックし、学びを実践に活かしましょう。